第16話 「湯」「散」などは服用する形
漢方の名前にある「湯」「散」「子」「飲」「丸」などは、服用する形を意味する。最も多いのが葛根湯など「湯」。「湯」は蒸気を上げて沸く湯のことで、煮詰めた煎じ薬(煎薬)として服用する薬の意味である。伝統的には煎薬が中心だったが、現在はエキス剤が主流となっている。エキスは「extrat(抽出する)」の略。化学的手法によって煎じ薬を顆粒状にしたものだ。インスタントコーヒーと同じ方法というと分かりやすいだろうか。温清飲などの「飲」も「湯」と同じ意味になる。
ちなみに日本語で「湯」とは温かい水や風呂を指すが、現代中国語ではスープを意味する。煎薬もスープも同じように作られるというわけだ。
五苓散、四逆散などの「散」は、生薬を粉末にした散剤として服用するもの。桂枝茯苓丸などの「丸」は、粉末にした生薬をハチミツなどで丸めたものだ。現在は、煎薬やエキス剤として使われることが大半である。
当帰飲子の「子」は、「○○する者」「道具(椅子・帽子など)」「優れたもの(孔子など))の意味である。つまり「当帰飲子」とは、老人性皮膚掻痒症など乾燥した皮膚のかゆみに使用される良い薬、ということを説明している。
加味逍遥散の「加味」だが、「味」は漢方薬を指し、生薬を加えているということ。「逍遥散」に熱を冷ます「牡丹皮」と「山梔子」を加えた方剤である。逍遥散は、更年期障害や月経前緊張症などに使われるが、加味逍遥散はこれらに熱症状がみられる状態に使用される。
ある方剤に別の方剤を丸ごと加えることを「合方」と言う。猪苓湯合四物湯は、ぼうこう炎に使う猪苓湯に、滋養分を補う四物湯を合方した方剤である。二つの方剤が合法されると作用は異なるものとなる。一方、生薬が加味されても、その方剤の基本的な作用はほぼ変わらない。
漢方生薬は、「一味」「ニ味」と数える。七味唐辛子は、七つの味を持つという意味ではない。唐辛子、陳皮(ミカンの皮)海藻、胡麻、山椒、麻子仁(麻の種)、炒唐辛子など七種類の漢方生薬の意味だ。これらは消化の促進作用がある。だから、薬味と呼ぶ。とはいえ薬効より、やはり味わいが印象深い。
三浦於莵
~2014年6月26日毎日新聞より転載~
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